【原典/翻案】
オスカー・ワイルド作
小説「ドリアン・グレイの肖像」
【青空文庫】
渡辺温 著 「絵姿 The Portrate of Dorian Gray」
※「ドリアン・グレイの肖像」の抄訳版
※※抄訳版:原文の抜粋による翻訳作品
https://www.aozora.gr.jp/cards/000020/files/2223_28386.html
【原典概要(2020/10/18 追記)】
※上記、渡辺温 著の抄訳版の概要です。
・ドリアン・グレイ:誰もが目を奪われるほど美しい容姿の青年。
・バジル・ホールワード:ドリアンの友人の画家。
・ヘンリー・ウォットン卿:バジルの知人。ドリアンの美しさに執着する。
・シヴィル・ヴェイン:女優。ドリアンの初恋の相手。
・ジェイムズ・ヴェイン:シヴィルの弟。
・アラン・キャンベル:ドリアンの知り合いの青年科学者。
19世紀のロンドン。ヘンリー卿はバジルのアトリエで、ドリアン・グレイの肖像画を見るやいなや、その美しさに感嘆のため息を漏らす。肖像画のモデルが自分の思う美の理想そのものだと感じたヘンリー卿は、ドリアンを紹介してほしいと言う。素直で純粋な自分の親友に悪影響を与えると懸念するバジルだったが、ちょうどそのときドリアンがアトリエを訪れた。
ヘンリー卿は、知性は美を破壊するもの、無垢で自由であることこそが美しいという特異な感性をもっていた。彼はドリアンの美しさを大絶賛し、美を保つためには禁欲しないこと、自由であることが重要だと説いた。
ドリアンは初めて自分の美しさを自覚すると同時に、今まで感じたことのない悲しみが湧き上がってくることに気づいた。「永遠の美しさを手にした肖像画が羨ましい。自分はいつまでも若く美しくありたい。代わりに肖像画が老いて醜くなればいいのに。」
欲望のままに行動するようになっていたドリアンは、好奇心で出かけた薄暗い下町で芝居小屋に入った。幕が開き登場した主演女優の可憐な花のような愛らしさに、ドリアンは感嘆の声を漏らした。芝居小屋に通い詰めたドリアンは、彼女と愛を語り合うまでになっていた。彼女はシヴィル・ヴェインという名前の、自分の美しさを認識していない初々しい十代の娘だった。
ヘンリー卿とバジルは、ドリアンの案内で芝居小屋へ出向いた。しかし、確かに相当美しい娘だが、なんという下手な芝居だろうかと思った。
幕が降りるや否や楽屋へ走り込んだドリアンに、シヴィルは微笑んで言った。「以前は芝居だけが私のすべてで、演じる役の喜びも悲しみも私自身でした。でもあなたは本当の私を教えてくれました。私はもう役を演じることができません。」
これを聞いたドリアンは、偉大な詩人たちの芸術を見事に体現するシヴィルを愛したのだと罵り、涙を流す彼女を残して立ち去った。
数日後、シヴィルは毒を飲んで死亡した。
シヴィルの死を知ったバジルがドリアンの元を訪れた。肖像画が覆われて置かれていることに気づいたバジルが肖像画に近づくと、ドリアンは「どうしても見せろと言うなら、僕たちの仲はこれまでだ。」と叫んで立ちはだかった。バジルが帰ると、ドリアンは肖像画を2階の使用していない部屋に隠し置いた。
数年が経過しても、この世のどんな汚れにも染まらない純情で美しいドリアンの容姿は衰えることがなく、ロンドン中の社交界や倶楽部では彼の怪しい噂を耳にするようになった。
噂について確認したいとバジルがドリアンの元を訪れたのは、ドリアンの38歳の誕生日の日だった。ドリアンの真実が知りたいと訴えるバジルを2階の古びた部屋へ案内したドリアンは、そこに隠してあった肖像画を見せた。肖像画の彼の顔は醜く変わり果てていて、バジルは思わず恐怖の叫び声をあげた。次の瞬間、背後から首筋に短剣の刃を受けたバジルは、その場に倒れこんだ。
翌朝、ドリアンは科学者のアランを家に呼び寄せた。ドリアンは、昨夜自分が殺人を犯したことを打ち明け、2階の部屋に隠してある死体を処理して欲しいと頼んだ。アランは顔色を変えて断ったが、ドリアンは薄ら笑いを浮かべながらメモに何かを書き込むと、それをアランに渡した。アランはそれを読むと狼狽した。「引き受けてくれるよね。これはふたりだけの永遠の秘密だ。」とドリアンは言った。
ドリアンは波止場近くの廃工場に挟まれたアヘン窟へ向かった。独りになりたかったのだが、部屋に知り合いがいたため踵を返した。バーカウンターのところに居たやつれ果てた女が「プリンス・チャーミング!」と呼びかけたが、ドリアンは足を止めずに外で出た。
アヘン窟の部屋の隅で突っ伏していた男が、驚いたように頭を上げたときには、扉が閉まる音が聞こえただけだった。男は慌てて外へ飛び出した。
ドリアンは雨の中を急ぎ、薄暗いに路地へ入った。すると何者かに背後から襲われた。必死に抵抗すると、銃の金属音が聞こえ、自分を狙う銃口と汚れた男が見えた。
男はシヴィルの弟ジェイムズだった。シヴィルが生前、プリンス・チャーミングと呼ぶ男のことを話していて、姉の死の原因となったであろうその男を18年間探し続けていたのだ。しかし、街灯の明かりでドリアンの顔を確認すると、20歳にも満たないであろう紅顔の美少年だった。ジェイムズは愕然とし、ドリアンに人間違いを謝罪した。
ドリアンがその場を去っていくと、立ち尽くすジェイムズに、アヘン窟にいた女が近づいてきて、どうして殺さなかったか尋ねてきた。自分が探す人物は、どう考えても40歳前後だからと彼が答えると、女はけたたましい声で笑いながら言った。
「プリンス・チャーミングが、私をこんな目に合わせたのは彼が20歳ぐらいのとき。もう18年もまえのことさ。」
それから1週間程過ぎた頃、外出先の植物室のガラス窓に張り付いて自分を眺めるジェイムズを見たドリアンは、恐怖のあまり気絶した。以来、ドリアンは終日部屋に籠るようになっていた。
ある日、久し振りに狩猟の仲間に加ったドリアンは、公爵夫人の弟と並んで馬を走らせていた。すると突然、彼等の前方の草むらからウサギが飛び出してきた。公爵夫人の弟が素早く反応したが、ウサギの鳴き声と同時に凄まじい人間の悲鳴があがった。草むらに潜んでいたジェイムズが撃ち殺されたのだった。
生活を改めたい衝動に駆られたドリアンは、ロンドンを離れ静かな田舎町に身を隠した。そこで美しい村娘と恋に落ちた。彼女はシヴィルに似て優しく愛らしい娘で、ドリアンは心から彼女を愛したが、自分と一緒になるのは彼女にとって幸せではないと考え、ひとりロンドンへ戻った。
ドリアンは村娘との事の顛末をヘンリー卿に打ち明けた。ヘンリー卿は、その結末は彼女の為ではなく、彼女のためを思った行動をする自分に陶酔した結果だと馬鹿にして笑った。それから、バジルの失踪と、科学者の青年が自殺した事件を知っているかと尋ねてきた。
過去はどうなるものでもない。ジェイムズは身元不明のまま埋葬された。アランは研究室でピストル自殺を遂げた。バジルの失踪もやがて人々から忘れ去られるだろう。それよりも、新しい生活への期待が膨らむばかりだったドリアンは、自分が村娘に行ったことは善行であると信じていた。そして、それにより肖像画の醜悪さが和らいでいることを期待した。しかし肖像画の中の自分は、以前にも増して醜く歪んでいた。
絶望のあまり、かつてバジルを刺したのと同じ短剣で肖像画の自分を刺し貫いたドリアンは、恐しい叫び声をあげて倒れた。物音を聞きつけた召し使いたちが部屋に入ると、美貌の少年の肖像画の前に、短剣で胸を刺し貫いた醜い人相の老人が死んでいるのを発見したのだった。
【MV】
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【ひとりごと】
「Nothing can cure the soul but the senses, just as nothing can cure the senses but the soul.」
という言葉が、快楽主義・享楽主義を表す意味で原典に登場します。
「魂以外の何ものも感覚を回復させることがないのと全く同様に、感覚以外の何ものも精神を回復させることはない。」
soulは「魂」だったり、「精神」だったり色々な言葉が当てられていますが、まぁだいたいこんな感じの意味です。ちょっと何言ってるか分からないです、って正直思ってますが。
苦手だ、こういうの(^_^;)