【ブラスタ】BLACKSTAR~Theater Starless~ 曲 解説メモ

ブラスタの公演楽曲、演目の原典等について調べたことを書いています。

花ほどく

f:id:monochrome_theater:20200419202907p:plain:w360
【原典・翻案】
作者不詳 歌物語「伊勢物語」より
(2021/04/29 訂正)
二十九段 花の賀
八十二段 渚の院

「歌物語」とは?
和歌と、その前後に数行の解説が付された構成で物語が語られる作品。


【伊勢物語(定家本) 八十二段 渚の院(2021/04/29 追加)】

《概要》

文徳天皇の第一皇子である惟喬親王(これたかしんのう)は、毎年桜の時期になると水無瀬の離宮を訪れ、酒を飲みながら和歌を詠むことに熱中した。
交野の渚の院の桜は格別に趣深く、狩り場であるにもかかわらず、狩りはせずに桜の木の下で皆で歌を詠んだ。

右馬頭(右馬寮の長官)は、

「世の中に たえてさくらのなかりせば 春の心は のどけからまし」
(世の中に桜というものが絶え無くなったなら、(桜が散る心配の必要がなくなり)春の心はどれほどのどかになることでしょう。)

と詠んだ。また別の人はこう詠んだ。

「散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき」
(散るからこそ桜は素晴らしいのです。この辛い世の中で、いつまでも変わらずにいることができるものがあるでしょうか。)

交野から戻ると日が暮れていた。夜酒を飲むための場所を探すと、天の河という場所を見つけた。
右馬頭が親王にお酌すると、親王が皆に「『交野を狩りて、天の河のほとりにいたる』という題で歌を詠んで酒を酌み交わしなさい」と言った。

右馬頭は

「狩りくらし たなばたつめに宿からむ 天の河原に われは来にけり」
(狩りをしているうちに日が暮れましたので、織姫に宿を借りましょう。私は天の川の河原に来たのだなぁ。)

と詠んだ。

皆がいっせいに歌を詠んだため、親王の代わりにお供の紀有常が返歌した。

「ひととせに ひとたび来ます君待てば 宿かす人も あらじとぞ思ふ」
((織姫は)一年に一度訪れる人を待っているのですから、(それ以外の人に)宿を貸すことはないと思います。)

一行は水無瀬の離宮に戻ると、夜更けまで酒を酌み交わした。酔った親王が御寝所に入ろうとすると、右馬頭はこう詠んだ。

「あかなくに まだきも月のかくるるか 山の端にげて 入れずもあらなむ」
(まだ満足していない、もっと眺めていたいのに、月は隠れてしまうのですか。山の端よ、逃げて月を入れないようにしておくれ。)

これにも、親王の代わりに紀有常が返歌した。

「おしなべて 峰もたひらになりななむ 山の端なくは 月も入らじを」
(どの峰も平らにならして欲しいです。山の端がなければ月も入れないですから。)



【伊勢物語について(諸説あり)】
ある男の、元服(15歳・今でいう成人式)から逝去までの生涯を綴った、全百二十五段からなる歌物語。
ある男のモデルは、歌人として有名な在原業平(ありわらのなりひら)であるとされる。


【伊勢物語・概要】
『伊勢物語』では、主人公は「男」と称され、この「男」の恋愛を中心に、友情や親子の情、旅先での出来事、さらに「男」以外の登場人物による恋愛エピソードなどのショートストーリーが、史実とフィクションを織り交ぜて描かれています。
以下、翻案のメインと推測される『花の賀』までの過程を簡単にまとめてみました。

*****************************

「男」は身分が高く歌を詠むのが上手であったたため、女性関係はかなり派手で、美しい女性に出会うと、歌を送っては口説くということを繰り返しています。
しかし、位が高く手の届かない女性と思い合うよになり、この女性と駆け落ちをしますが、女性の親族たちに見つかり連れ戻されてしまいます。
そして、この事件がきっかけで都に居づらくなった「男」は、東国へ旅に出ます。旅先で見かける花や山、鳥、出会う人などに、いちいち都を思い出しては落ち込みます。
時は過ぎ、ある日、天皇の后の館で開かれる花見の宴に招かれます。この后は、実は駆け落ちした相手であり、女性は天皇に嫁ぎ、皇太子を生み母となっていました。
宴で眺める満開の桜に、以前の燃えるような恋心が思い出されます。御簾の向うの女性とは言葉を交わすことはおろか、顔を見ることも叶いませんが、この時間が終わらなければいいのにと願うのでした。

*****************************

この時代の物語で、恋愛がらみのお花見がらみには、有名な『源氏物語』がありますが、ロード画の「東国へ~都に戻ってきた」のくだりが一致するのは『伊勢物語』です。
『伊勢物語』は様々な解釈がなされているため、これが正解!というものではありませんが、経緯を簡単にでも知っておくことで、ロード画の翻案・脚色部分の文面の理解が捗るのではと思いました。

ちなみに、「翻案」とは「既に公開されている作品の設定やエピソードに基づきながら、別の作品を作る」ということです。スターレスでは、「HalloweenNight」や「僕のすべてを君に捧げる」なども翻案ものでしたね。


【おまけ】
☆4イベカードストーリー内に和歌が出てきたので、ついでに調べてみました。 (カスミと柘榴のみです)

[カスミ]
「桜花(さくらばな) 散らば散らなむ散らずとて ふるさと人の来ても見なくに」
(古今和歌集 惟喬親王)

桜の花よ、散るのならば散ってしまえ。散らずにいたとしても、昔なじみの人が訪ねてきて見るわけでもないのだから。

[柘榴]
「なら(習)はねば 世の人ごと(毎)に何をかも 恋とはいうふと問ひし我しも」
(伊勢物語 三十八段 恋といふ より)

(私は恋の経験がないので)世の人に会うたびに、「恋とは何か」と質問している。その程度の私に恋について教わろうとは(なんて筋違いなことでしょうか)


【参考】
伊勢物語 - Wikipedia
伊勢物語の世界
伊勢物語 全章徹底解読 音声つき
『伊勢物語』を簡単に解説!平安のプレイボーイ・在原業平や作者、あらすじも | ホンシェルジュ
覚えよう!伊勢物語の特徴と内容!


【イベントPV】
花見イベントPV「花ほどく」 - YouTube


【歌詞】
花ほどく/ブラックスター -Theater Starless--カラオケ・歌詞検索|JOYSOUND.com