【ブラスタ】BLACKSTAR~Theater Starless~ 曲 解説メモ

ブラスタの公演楽曲、演目の原典等について調べたことを書いています。

ふたつ星が出逢う夜


【原典/翻案】
紫式部作
小説「源氏物語」四十一帖「幻」
他界した最愛の妻である紫の上を偲びながら過ごす源氏52歳の1年間を描く


【あらすじ】
年始の挨拶に訪れる人に会おうともせず、春を迎えてもなお物想いに耽る日々を過ごす源氏。紫の上を偲んで喪中の衣装のままで過ごしている女房(女官)たちと語らいの場を設けるも、源氏と他の女性との噂だったり、源氏が自分より高貴な身分である女三宮と結婚したことで実質的に正妻の座を奪われたりと、紫の上が心を痛めていた様子ばかりが話題となってしまう。
恵まれた地位、容姿、才能を持ち、若かりし頃には罪悪をみじんも感じなかった数々の振る舞いが、どれだけ最愛の人を傷つけ苦しめてきたのかと過去を顧みる源氏の姿には、かつての色好みの名残はなかった。

娘の明石中宮は、気晴らしになるかと思い息子の匂宮を源氏に預けた。匂宮の愛らしい振る舞いに笑みを取り戻した源氏は、彼を連れて出家した女三宮を訪ねた。しかし、満開の花の話題を持ち出した源氏に、出家した身分ではそのような風情は持ち合わせていないと答える女三宮に、紫の上だったら気の利いた答えを返すだろうと考え涙してしまう。
そして、側室の明石の君の元を訪れた源氏は、出家を考えているが枷が多く実現に至らないと零す。夜遅くまで滞在したが泊まることなく明石の君の元を後にした源氏は、自身の品行方正さを自嘲する。

梅雨時になると、天候の憂鬱さも相まって更にぼんやりと過ごす日々が続く。無気力な様子の源氏を心配し訪れた長男の夕霧は、紫の上の一周忌の法要の相談をしながら思い出話の相手を務めた。
七月七日になっても、例年のような宴を催すこともなく物思いに沈む源氏。牽牛と織女が1年に1度の再会を果たす夜空を共に見上げる相手はいない。夜深くに起きて妻戸を開き外へ出た源氏が歌うには

「七夕の逢ふ瀬は雲のよそに見て別れの庭に露ぞおきそふ」
(七夕の逢瀬は雲の上の別世界のことと思い、その後の朝、別れの庭の朝露に私の悲しみの涙を添えます)

淡々と過ぎる日々に悲しみは増すばかり。そして秋になり一周忌の法要を終え、年が明けたら出家をと考えている源氏は身辺整理をはじめた。形見の品を女房たちに与えたり、女性たちからの文を処分したり。そして、これだけはと大切にしていた紫の上からの文も処分した。
年の瀬の法要で大勢の僧侶や公卿が集まる中、久しぶりに公の場に姿を見せた源氏は、若かりし頃よりも輝きを増して見えた。大晦日になると、源氏は世俗で迎える最後の新年の準備をはじめたのだった。


【青空文庫】
紫式部 與謝野晶子訳 源氏物語 まぼろし


【参考】
幻 (源氏物語) - Wikipedia
源氏物語を読む 41 幻 まぼろし


【PV】
www.youtube.com