【原典/翻案】
アーサー・コナン・ドイル作
小説「最後の事件(The Final Problem)」
【原典】
https://221b.jp/
こちらのサイトでは、シャーロックホームズシリーズの全話和訳を公開してくださっています。「最後の事件」は、画面上部の〔回想〕をクリックして表示される短編集全11話の最終話となっています。短編なので、それほどボリュームがあるわけでもなく、読みやすいのではと思います。
【原典概要(2020/10/08 追加)】
・シャーロック・ホームズ:ロンドンの私立探偵。
・ジョン・H・ワトソン:元軍医。ホームズの手助けをし、彼の活躍を記録してきた。本文中の「私」はワトソンである。
・モリアーティ教授:ホームズと同等の知能を持つ数学教授。犯罪組織の統領で、自分では手を汚さない陰の男。
私は、ホームズと初めて会うきっかけとなった「緋色の研究」事件から、「海軍条約文書」事件までを記録に残してきた。しかし、事件の記録はもう終わりにし、2年が経過してもなお、心の穴が埋まらないあの事件については何も言わないつもりだった。
だが、最近になって、モリアーティ教授の過去を弁護する複数の投書がなされた。そしてそれらはすべて、事実を捻じ曲げられたものであった。あの事件の真実を知るのは私だけであり、モリアーティ教授とシャーロックホームズ氏の間に実際に起きた事を、ここで初めて明らかにする事は私に科せられた使命なのである。
私が結婚し開業医を始めると、ホームズとの関係が少し変化していった。私は彼がフランス政府の依頼で事件を手がけていたことは新聞で知った。そして、1891年4月24日の夜、彼は私の診察室に突然現れ、鎧戸を閉じてかんぬきを掛けると、命を狙われていることと、モリアーティ教授について語りはじめた。
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モリアーティ教授は21歳で執筆した論文が大評判になった天才で、大学の数学教授を務めていた。しかし、犯罪の資質と並外れた知力が変質し、黒い噂が付きまといはじめると、教授職をクビになった。そして、現在ロンドンで発生する多くの悪事と未解決事件の黒幕が彼であり、組織的に行われるそれらの犯罪に直接手を染めることがない彼は決して捕まらないのだ。
しかし遂に彼は小さなミスを犯した。僕は彼の周りに罠を張り巡らせた。次の月曜日には、彼は組織の主要メンバーと共に警察の手に落ちるだろうところまでこぎつけた。
僕が自分の部屋に戻ると、彼が僕の目の前に姿を現した。彼は僕に手を引くように要求し、脇に退かなければ踏みつぶされると言った。僕が断ると、彼は「私と君の決闘だ。もし、君に私を破滅させるほどの知恵があるとすれば、私が君を破滅させることもできるということだ。」と。僕が「あなたを破滅させられるのであれば、喜んで自分も破滅しましょう。」と答えると、彼は部屋を出て行った。そしてそれ以降、教授の手下からの襲撃が始まった。馬車が稲妻のように僕に向かって突っ込んできた。ある家の屋根からは、レンガが落ちてきて、僕の足元で粉々になった。今、ここ来る途中には、ならず者に襲われた。
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私が、今晩うちに泊まって行くかと尋ねると、自分は危険な客だからと言った。そして、モリアーティ教授が警察の手に落ちるまでの数日間、大陸へ逃げることにしたが、一緒に来て欲しいと。もちろん私は彼に同行することにした。彼は翌朝の合流方法を伝えると、塀を乗り越えて姿を消した。
翌朝、私はホームズの指示を忠実に守り駅に向かった。約束の列車の客室に彼の姿はなく、心配する私をよそに発車の合図が鳴った。すると、目の前のイタリア人老神父が声をかけてきた。その男は変装したホームズだった。列車が動き始めると、ホームで背の高い男が群集を掻き分けながら、列車を止めろと合図しているのが見えた。しかし列車は加速し、駅を後にした。
ホームズは、昨晩自宅が放火されたと言う。そして、モリアーティ教授は何らかの方法で私が駅に向かったことを知り、私が乗った列車を止めようとしたのだろうと。この列車は特急で、大陸へ向かう船に接続しているから心配ないのではと私が言うと、彼はモリアーティ教授は特別列車を用意させ、この特急の停車駅で追い越して港へ先回りするだろうと予想した。
そして私たちは、荷物を置いたまま途中駅で列車を降りた。下車した駅では、モリアーティ教授を乗せたと思われる特別列車が走り抜けていった。
私たちは歩いてニューヘブンの港へ行き、フランスのディエップへ渡ってブリュッセルに向かい、そこで2日過ごし、次の日にはフランスのストラスブールを訪れた。
月曜の朝になり、ホームズはロンドン警察に電報を入れた。夜になって届いた返答には、組織は壊滅させたがモリアーティ教授だけは取り逃してしまったと書かれていた。
すると彼は、モリアーティ教授は全精力を傾けて自分に復讐するだろうから、巻き込まれないように私にロンドンに帰るよう勧めてきた。私にはこれは聞き入れ難く、結果、一緒にジュネーブに向かうこととなった。
ローヌ渓谷からスイス入りし、ゲンミ峠を越えた後、途中のマイリンゲンで宿に泊まることにしたのは、1891年5月3日のことだった。翌日の午後には、英語が達者な宿の主人の勧めで、ライヘンバッハの滝へ立ち寄った。
滝の見物を終えようとしたとき、スイス人の若者が宿の主人からの手紙を持って現れた。手紙には、私たちと入れ違いに宿に到着したイギリス女性が、大出血を起こして倒れた。持って数時間と思われる状態だが、断固としてスイス人医師の診療を拒んでいるので、私に戻って診てほしい...ということが書かれていた。
私は、これを断る事ができなかったが、ホームズがひとりになることを躊躇った。しかし彼は、手紙を届けた若者をガイドとして滝に残ると言い、夜にローゼンラウイで落ち合おうことになった。私が滝を離れる途中で振り返ると、ホームズは岩にもたれて腕を組み激しく流れる水を見下ろしていた。坂を下りきって再度振り返ると、すでに滝は見えず、滝に続く小道を力強い足取りで歩く男が見えたが、私は気にすることなく宿へ向かった。
1時間ほどかけて到着すると、宿の前に主人が立っていた。女性の容態を尋ねる私に、主人は驚いた表情を見せた。手紙は主人が書いたのではなかった。もちろん、危篤のイギリス人女性なんて存在しなかった。主人は、私たちが出発してすぐ訪れた背の高いイギリス人の男性のことを説明しはじめたが、私は滝へ向かって走り出していた。
下りで1時間の滝までの道のりは、頑張ったところで2時間以上かかっていた。ホームズの登山杖は別れたときと同じ場所にあったが、彼の姿はなかった。叫んでも返事もない。手紙を届けた若者もいない。あまりの恐怖に気を失いそうだったが、ホームズの推理手法を思い出し冷静に辺りを観察した。ふた筋の足跡が滝のすぐそばまで伸びていて、こちらに戻ってくる足跡はなかった。滝の手前の地面は踏み荒らされている。湧き上がる霧の向こうへ叫んでみても、滝の轟音が聞こえるだけだ。
私は、登山杖が立てかけられている岩の上に、光るものを見つけた。それは彼の銀の煙草入れで、上に小さな紙が置いてあった。私宛の手紙だった。
手紙には、モリアーティ教授の厚意で手紙を書いていること、宿からの手紙が偽物だと気づいていたこと、モリアーティたちを有罪にするのに必要な書類の隠し場所などが書かれていて、さようならの言葉で結ばれていた。
2人の男がこのような場所で争えば、滝へ転落するのは避けられないのは、警察の調べにおいても疑う余地はないとされた。遺体を回収できる見込みもなかった。ライヘンバッハの深い滝つぼの底には、最も恐ろしい犯罪者と最も優れた法の擁護者が今も沈んでいるのだ。
後に、悪の組織はホームズが集めた証拠により暴かれたが、モリアーティ教授に関しては、裁判でもほとんど詳細が明らかにならなかった。
今頃になって、私がこれを語らなければならなくなったのは、無分別なモリアーティ教授の擁護者が現れたからだ。彼らはモリアーティ教授の過去を清めるために、ホームズを攻撃しようとしている。ホームズこそ、私がこれまで出会った中で最も素晴らしく賢明な男で、私が永遠に尊敬し続ける人物なのである。
【MV】
https://www.youtube.com/watch?v=Q_v5r3-M5HE
【歌詞】
2021/04/04 歌詞を削除いたしました。
【ひとりごと】
うわぁぁぁぁぁ、もう、、、
ブラスタやってて
良かった(*ノωノ)♪
(既視感がwww)
シャーロックホームズは、ほぼ初恋の人(ほぼ?)で、小学4~5年生頃に本気で惚れてました。
だから「最後の事件」で、ホームズが死んだ(かも)ってときは、本気で泣いたんです。作品発表当時、コナンドイルの元には抗議が殺到したそうです。(そりゃそうだ、私でもそうしたと思うもん。)
で、「最後の事件」の発表から10年近く経って出版された「シャーロック・ホームズの帰還」という短編集で、「最後の事件」の3年後としてホームズは復活(実は死んでなかったよ)を遂げます。
これらの小説は、ホームズの助手のワトソンの語り形式で進んでいくのですが、冒頭の歌詞にある
「It lies with me to tell for the first time what really took place between Professor Moriarty and Mr. Sherlock Holmes.」
は、小説の序章で書かれている文章で
「モリアーティ教授とシャーロックホームズ氏の間に起きた事実を、ここで初めて明らかにする事が私の使命である。」
というような意味になります。
タイムリーなことに、「憂国のモリアーティ」という漫画が今期アニメ化されていますね。こちらはモリアーティが主人公でダークヒーローっぽくなっています。こちらのモリアーティのCVは斉藤壮馬さん(メノウ@ブラスタ)で、モリアーティのやり手の部下セバスチャンは日野聡さん(ケイ@ブラスタ)です\(^o^)/★
てか、ケイ様はホームズ?モリアーティ?主人公だから、やっぱホームズ?スターレスでアルセーヌルパンもやって、ホームズもやるって、わたし的にどストライクなんですが。いいなぁ~どっちも観たいなぁ~
(´;ω;`) スターレスってどこにあるん?
【参考】
https://221b.jp/h/fina.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BB%B6