【原典/翻案】
オスカー・ワイルド作
童話「幸福な王子」
※「幸福の王子」「しあわせな王子」など訳者によって邦題は異なる。原題は「The Happy Prince」
【あらすじ】
ある町の中心部の高台に立つ幸福の王子の像は全体が金箔で覆われ、 目にはサファイア、腰に差した剣の柄にはルビーが光っていました。美しい像は町の人々の自慢です。
ある夜、越冬のためエジプトへ向かった仲間たちと行動を共にしなかったツバメが町にやって来て、幸福の王子の両足の間で休むことにしました。ツバメが眠ろうとしたとき、大きな水滴がひとつ落ちてきました。訝しんでいると、さらにひとつ、ふたつと水滴が落ちてきます。ツバメが頭上を見上げると、王子の目から涙が零れ落ちていました。
ツバメが話しかけると、王子は答えました。私の心臓は鉛でできているけれど、それでも泣かずにはいられないと、貧しい町の人々のことを嘆き悲しんでいました。そして、剣の柄のルビーを貧しい母子に届けて欲しいとツバメに頼みます。次の日には片目のサファイアを若者に、その次の日には残りのサファイアを少女に。
エジプトへ向かうことをやめ、目を失った王子と一緒にいると決めたツバメは、町の様子を見に行っては王子に話します。すると王子は、体の金箔を1枚づつ剥がして町の人々に届けるように頼みました。そしてついに、王子は灰色になってしまいます。
町に雪が降り始めました。王子のことを心から愛するようになっていたツバメは、 自分の最期を悟ると、力をふり絞って王子のくちびるにキスをします。そして力尽きて王子の足元に落ちていきました。と、その瞬間、王子の像の中で鉛の心臓が二つに割れる音が響きました。
町の人たちはみすぼらしくなった像を撤去し、溶鉱炉で溶かして再利用することにしました。しかし、割れた鉛の心臓だけは溶けなかったため、死んだツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられました。
神さまは、町の中で最も尊いものを二つ、天国に持ってくるように告げました。天使は、鉛の心臓と死んだツバメを持ち帰り、神さまに褒められました。
【青空文庫】
幸福の王子
【PV】
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