【原典/翻案】
江戸川乱歩 作
小説「黒蜥蜴」
【あらすじ】
・明智小五郎(あけち こごろう):私立探偵。
・黒蜥蜴(くろとかげ):盗賊団の女首領。
・雨宮潤一(あめみや じゅんいち):黒蜥蜴の手下。
殺人を犯した雨宮潤一は、逃亡資金を黒蜥蜴に借りに店を訪れていた。話を聞いた黒蜥蜴は、逃亡するよりも「雨宮潤一」という男を殺してしまえばいいと言い、とある大学に侵入し、解剖実験用の死体の山から若い男性の死体を選ぶと、潤一に運び出させた。
緑川という偽名でホテルを予約していた黒蜥蜴は、自分の隣室を連れの男性に用意するようボーイに告げた。「山川健作」と台帳にサインしたその男は潤一の変装した姿だ。
潤一を助けた代償として、黒蜥蜴は自分の企ての手伝いをさせる。同じホテルに滞在中の大阪の宝石商・岩瀬の娘を誘拐し、岩瀬の保有する「エジプトの星」と呼ばれるダイヤモンドを身代金として要求する計画を明かした。
隙を見て早苗を山川の部屋に連れ込んだ黒蜥蜴は、早苗に変装して岩瀬の部屋に戻ると、岩瀬の常用薬を睡眠薬とすり替えて熟睡させた。
岩瀬が部屋に戻りしばらくすると、電報が届いた。
「今夜12時に注意せよ」
見張りをする明智に、様子を見に来たと告げる緑川は話し相手にと居座る。そして12時を迎えた。
何事もなかったように思えたが、緑川の言動に不穏さを感じた明智が寝室へ入ると、早苗であるはずのそれはマネキン人形の頭と丸めた敷布団に布団を被せただけの稚拙な仕掛けだった。
しかし、一本の電話により冷静さを取り戻した明智は、事件の核心を突く発言で緑川を青ざめさせる。明智の部下と警官に伴われた早苗が部屋に戻ってくると、念のためと明智のピストルを盗んでいた緑川は、早苗の誘拐を諦めたわけではないと告げて逃亡した。
岩瀬と早苗は大阪の自宅に戻り、明智は引きつづき警護にあたることになった。
ある日、大阪市内の繁華街を歩いていた桜山葉子は、頼みたい仕事があると見知らぬ老紳士に声をかけられた。たったいま上司と喧嘩して仕事をクビになり、体を売るか自殺しようかと考えていた葉子は、破格の報酬を提示されたその仕事を引き受けたのだった。
応接室のピアノを弾いていた早苗は、部屋に戻ろうと立ち上がり、振り返って驚いた。窓には鉄格子、部屋の外には見張りがいる。なのに、みすぼらしい姿の男が目の前に立ちはだかっていたのだ。
ピアノの音が止んで30分以上経つと、見張りたちはさすがにおかしいと思った。早苗を案じてやってきた婆やが、話を聞き応接室の中を覗くと、乞食のような姿の男が長椅子の上に横たわっているだけだった。長椅子は嘔吐物で汚れ、床にはウイスキーの瓶が転がっている。警察に通報し、男は連行されたが、早苗は忽然と姿を消してしまった。
連絡があり慌てて帰宅した明智は、偽の家具屋が回収していった長椅子の中に早苗が監禁されていたことに気づき警察に手配するが、偽家具屋も早苗も発見されるには至らなかった。
翌日になって、黒蜥蜴から「エジプトの星」を要求する封書が届く。取引に現れた黒蜥蜴は早苗の解放は後だとして、岩瀬の持参した宝石を受け取る。迎えの車に乗り込みその場を去る彼女は、後をつけてくる車があることに気づいていなかった。
船内でのおばけ騒ぎに加え、取り乱していた早苗が妙に落ち着いた様子になったことから、明智の侵入を確信した黒蜥蜴は、部下たちに船内をくまなく探させた。そして、ある疑念を抱くと、長椅子に向けて大声で「明智さん」と呼びかけた。すると、椅子の中から呼びかけに答える声がする。会話を続けながら、明智に悟られないよう部下たちにロープで長椅子をぐるぐる巻きに縛りあげさせた黒蜥蜴は、そのまま長椅子を海へ投げ捨てさせた。
東京湾の埋立地の海岸近くに錨を降ろした船から、黒蜥蜴、潤一、目隠しした早苗が上陸し、ある廃工場の地下へ入っていく。
数々の宝石とともに、美しい人間の姿を永久に保存するために考案された人間の剥製が飾られ、さらには溺れる人間を鑑賞するための巨大水槽を見せられた早苗は、恐怖のあまり気を失ってしまう。
停泊中の貨物船の部下が廃工場地下の黒蜥蜴の部屋を訪れ、船の火夫である松公がいなくなったと報告した。さらに別の部下が、剥製に服が着せられ、陳列していた宝石を身に着けているという。訳の分からないいたずらに苛立った黒蜥蜴は、早苗を水槽へ入れるよう潤一に命じた。
少しして、潤一がどこにもいないといって部下が部屋にやって来た。黒蜥蜴が確認のため水槽へ行くと、そこには潤一も早苗の姿もなく、早苗の無事を伝える新聞が置かれているだけだった。記事の日時のつじつまが合わないことに混乱した彼女の前に現れたのは、潤一に変装した明智だった。
黒蜥蜴が攫った早苗は実は替え玉だったこと、長椅子の中にいたのが松公だったことなど、次々と種明かしをする明智。そこへ黒蜥蜴の部下がやってきて明智に襲い掛かるが、近くに飾られていた人間の剥製たちが動き出た。明智が呼んだ警官たちが扮装していたのだ。逃げられないと悟った黒蜥蜴は素早く自室に逃げると、捕まるくらいならと毒を飲み倒れる。明智が抱き起こすと、最期の願いを明智に伝えた黒蜥蜴はそのまま息を引き取ったのだった。
【青空文庫】
江戸川乱歩 黒蜥蜴
【PV】
サマーフェスイベントPV【TeamK】「黒い虚実」 - YouTube
【歌詞】
2022/04/24 歌詞を削除いたしました。