【原典/翻案】
ヨーロッパ民話
ペロー童話集
グリム童話集 など
「赤ずきん」
および
ロバート・ルイス・スティーヴンソン作
小説「ジキル博士とハイド氏」
【原典概要:赤ずきん(ペロー版)】
むかし、あるところに美しい女の子がいました。 赤いずきんが似合う女の子は「赤ずきんちゃん」と呼ばれていました。
ある日、赤ずきんちゃんの母親が、
「おばあさんが、具合が悪いそうだから様子を見ておいで。」
と言い、ガレットとバターの壺を持たせました。
おばあさんの所へ向かうための森の途中、 赤ずきんちゃんは狼おじさんに出会います。
狼おじさんは、どこへ行くのか、家はどこかなどと いろいろと尋ねてきます。
赤ずきんちゃんは正直に答えます。
すると、狼おじさんは言いました。
「わしもおばあさんに会いたくなった。 わしはこっちの道から、お前さんはそっちの道から、 どっちが先に着くか競争しよう。」
狼おじさんの道は近道でした。
赤ずきんちゃんは遠回りの道を、 蝶を追いかけたり、花をつんだしながら行きました。
狼おじさんは、先におばあさんの家に着くと おばあさんを食べてしまいました。
しばらくして、赤ずきんちゃんが到着しました。
狼はベッドに隠れ、家に入って来た赤ずきんちゃんに
「ガレットとバターの壺を置いて、 こっちへ来ておばあちゃんと一緒にお休み」
と言いました。
赤ずきんちゃんは服を脱ぎ、ベッドに入ろうとしますが、 おばあさんの姿を見てとても驚きます。
「おばあちゃん、なんて大きな腕をしてるの?」
「おまえを上手に抱けるようにだよ」
「おばあちゃん、なんて大きな脚をしてるの?」
「速く走れるようにだよ」
「おばあちゃん、なんて大きな耳をしてるの?」
「よく聞こえるようにだよ」
「おばあちゃん、なんて大きな目をしてるの?」
「よく見えるようにだよ」
「おばあちゃん、なんて大きな歯をしてるの?」
「おまえを食べるためさ」
狼おじさんは、そう言うと 赤ずきんちゃんを食べてしまいました。
子どもたち、とりわけ若い女の子が、 誰にでも耳を貸すのは、とんだ間違いなのです。
そのあげくに食べられてしまっても、すこしも不思議なことではありません。
優しげな人間というのは、どんな狼とも比べ物にならない危険な生き物なのです。
【原典概要:ジキル博士とハイド氏】
・ジキル:医者
・ハイド:謎の青年
・アターソン:ジキルの友人の弁護士
ロンドンの下町で、少女が踏みつけにされる事件が起きた。民衆に取り押さえられた犯人の"ハイド"という青年は、慰謝料として300ポンドを要求される。路地裏の奥の家に入っていくハイド。そして、300ポンドの小切手を持って家から出てくる。小切手にはジキル博士のサインがあり、瞬く間に事件の話が広まっていった。
その話を聞いたジキルの友人で顧問弁護士のアターソンは、ハイドがどんな人物か知らない。ただ、預かっているジキルの遺言には"ハイド"に全財産を譲ると書いてあるのだった。ジキルが指定する人物が、そんな事件を起こす男であるとわかり、アターソンはショックを受ける。
一年後、テムズ河でイギリス上院議員の男が遺体で発見される。ハイドが、偶然出会った上院議員と口論になり、ステッキで撲殺したのだった。犯行に使われたステッキはジキルのもので、事件を知ったアターソンはジキルの家を訪ねる。
ジキルはショックを受けている様子だったが、二度とハイドに会わないとアターソンと約束する。そして、そのままハイドは行方知れずとなっていた。
ふた月後、ジキルとアターソンの共通の友人ラニヨンが亡くなり、アターソン宛に遺書が届いた。封筒の表に「ジキルが死亡または失踪するまで開封するべからず」と書いてあったため、アターソンは中を確認せずにおいた。
ある日、ジキルがハイドに殺されたという噂を耳にしたアターソンは、ジキルの家に向かう。
そこで、ジキルの服を着て倒れているハイドを見つける。毒を飲んだ様子で、既に虫の息であった。アターソンはジキルを探すうちに、自分宛の封筒を発見する。封筒には2通の手紙が入っていた。ひとつは新しい遺言状で、アターソンを相続人とすると書かれていた。もうひとつには、読む前にラニヨンの手紙を読んでほしいと書いてあった。
アターソンは自宅に戻り、ラニヨンから届いていた遺言を読む。
ラニヨンはジキルから、“私の実験室の机の三段目の引き出しを抜き取って、君の自宅に運んでくれ”と頼まれた。その通りにすると、ハイドがラニヨンの自宅を訪れた。そして、引き出しの薬をハイドが飲むと、背が伸びてジキルの姿になった、2人は同一人物だったのだ、と書かれていた。ラニヨンはこの出来事にショックを受け、不眠症になり衰弱死したのだった。
アターソンは、続けてジキルからの手紙を読む。
ジキルは、善良な医者としての自分と、悪の衝動に駆られる自分の二面性に苦しみ、悪の部分を「ハイド」として分離させる薬を完成させる。だが、使い続けるうちに薬を飲まずともハイドに変身するようになり、ジキルに戻るために大量の薬を必要とするようになってしまった。
そして手紙の最後には、もう死の道を選ぶしか方法がない、と書かれていたのだった。
【参考】
・赤ずきん - Wikipedia
・やっぱりわりと残酷だった! 「赤ずきん」 – 絵本の森
・ジキル博士とハイド氏 - Wikipedia
【MV】
www.youtube.com
【歌詞】
僕のすべてを君に捧げる/ブラックスター -Theater Starless--カラオケ・歌詞検索|JOYSOUND.com
【ひとりごと】
「赤ずきん」は、ヨーロッパの各地に元となったと推測できる民話が存在し、1697年にフランスで発行されたペロー童話版、1812年にドイツで発行されたグリム童話版があり、狼が改心して誰も死なないハッピーエンドな日本版も存在するそうです。
グリム童話版は猟師が出てきて赤ずきんちゃんもおばあさんも助かります。ペロー童話版は、残忍な表現のある民話より、若干ソフトにしてあるようですが、おばあさんも赤ずきんちゃんも助かりません。そして、最後には教訓が述べられているのが特徴です。
古くから語り継がれる物語というのは、教訓伝承の役割があるのでしょうが、童話として再編されるうちに、そういった要素は薄まっていくようです。
「ジキル博士とハイド氏」は二重人格ものの代名詞ですが、実際のところは、最後の最後、謎解き種明かしの要素が「ひとりでふたつの人格をもつ」なんですね。。。
これって、推理小説の犯人が世間に知れ渡ってるようなものなのでは(-_-;)?
作者も、まさかこの作品がこんな風に後世に残っていくとは、思っていなかったでしょうね。